The Knack Log 以前書いたコラムです。
 2003年9月から2004年5月までのコラム The Knack のLogです。

The knack

knackとは「コツ」とか「やり方」といった意味です。You'll get the knack of it. (いまにこつを掴むよ)のように使います。
knackを hangや trickに置き換えても同じように使えます。
英語学習について私が日々知り得たこと、感じたことなどを行き当たりばったりに綴ります。
中には役に立つこともあるかもしれません。どうぞご参考に。


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1)語学の上手な勉強法・・・語学留学は効率が悪い 2003/09/01

 この春バンクーバーで1ヶ月余り語学研修を受けた際、たくさんの若い日本人学生に会いました。多くは1年くらいは学んでいるのですが、概してその英語の力はかなり低いものでした。中には4年間大学にいたという男子学生が私が聞いても驚くほどつたない英語で話していた例もありました。(カナダ日記に詳しく記述があります)

 近年の語学の勉強法の進歩は永年やってきた私などにとっては目を見張るものがあります。ひとつはMD録音機・IC録音機、それにIC辞書など機器の進歩。今ひとつは書店に並ぶテキスト類に付属するCDコンテンツの充実。それにも増して大きいのはシャドウィング・オーバーラッピングといった優れた練習法の普及です。

 語学は頭脳で理解・納得する部分と肉体(耳と口・腹筋等)を駆使して鍛錬する部分とがあり、実は後者の方がはるかに大きく重要なことを多くの人はまだわかっていません。そして前者も後者も実は海外に出かけるより自国にいて徹底練習する方が力はつき易いことを自らのバンクーバー体験で確信しました。

 「英語は英語国民から習うのが一番いいはずだ」という考えはあまり正しくないとは多くの経験者が指摘してきたことです。150年前、ジョン万次郎は漂流中米国人に助けられ、辞書ひとつない中で大変な苦労をして英語を学びました。この現代日本の我々がわざわざ万次郎と同じ苦労をしようとするのは賢明ではありません。

2)語学の上手な勉強法・・・英作文と添削の活用  2003/09/05

 生徒のMSさんが書いた英文日記を添削していたところ、「閉館する映画館へ行ってみたらいろんなものが懐かしく感じた」というくだりで、この「懐かしい」に窮しました。せっかくの良い事例なのでこの場で皆さんと一緒に勉強してみたいと思います。

 日本語と英語で表現のしかたが大きく異なるものが時々あります。「懐かしい」もそのひとつだと思います。日本語では「〜が懐かしい」と形容詞で言えますが、英語にはそれにどんぴしゃの形容詞はどうも見当たりません。同じような気分を英語では違った構造で表すわけです。(old and familiarというのは近い使い方ですが)

 こんな場合、英辞郎という辞書サイトを見ると豊富な事例が載っています。
ただ、いつも言いますが、和英辞典でこれだと思う表現を見つけても、見たこともない表現にすぐ飛びつくのはいけません。そういう英作文はたいてい間違っています。自分が見聞きしたことがあって、「そうそうこの表現を探していたんだ」と思うようなもののみ採用です。つまり日ごろからいろいろな英語を見聞きして自分の目を養っておかなくては和英辞書すら役に立たないことになります。

 さて英辞郎を見ると「懐かしい」はたくさんの事例が出ていましたがどうも私が飛びつくものには出会えませんでした。結局Longman英英辞典を見ていてこんなのが浮かびました。
Everything made me feel nostalgic in the theater.またEverything was old and familiar for me.もいいでしょうね。

 少し力がついた人には英作文を奨めます。MSさんのように英文を書いてみると、次から英文に接するとき、「これは自分が言うときに使えるな」という意識で接するようになります。「英作文なんて無い。あるのは英借文だ」と言い続けた先生がいました。大杉正明先生は「腹八分目」と言われました。つまり「言いたいことを80%表わしてくれる表現を知っていたらそれを使いなさい。しょせん100%は無理。」という意味です。私も「知ってる言葉で話す」のを心がけてきました。そのため「知ってる言葉」の少なさにいつも苦労しています。さあ勉強、勉強。
 

3)読書グループの効用:一人ではできない勉強 2003/09/08 

 市民英語サークル、アクセスのBグループではこの半年近く、数人の有志と原書を読んできた。本はKazuo Ishiguroの"The remains of the day"(邦題:日の名残り)。
大変格調高い文章が読む者を悩ませる難物であったが、ここへきて苦労をした甲斐があったと感じている。

 正直言って小説のたぐいは日本語でも読まない私であった。ほんの半年前から、肩の凝らないものを徐々に読み始めたのだが、そのときはどんどん読み進むことを優先し、細かいところにこだわってはいなかった。

 Bグループではせっかく皆で取り組むのだから、難しいものを選んだ。そして精読を目指した。その結果、参加者は少数だったが、得がたい経験をさせてもらった。一回に2・3ページしか進まないが、全員が十分に目を通し、辞書を調べて集まる。1センテンスずつ順番に読み、訳していく。1センテンスといってもこの本の1センテンスは4分の1ページほどもあることがしばしばである。どこまで行ってもカンマ、ハイフン、コロン、セミコロンのオンパレード。やっとピリオドを見てほっとするという本である。

 訳すといっても、それらしい日本語に直せば良いというものではない。どれがどれの主語か、動詞か、代名詞は何を表しているのか・・・けっしてごまかして素通りせず、文章構造をしゃぶり尽くす感じだ。辞書引きが深くなり、文法書にも当たる機会が増えた。その結果、「作家は無駄な単語は書かない。書かれている以上絶対何かしらの役割を担っている」ということを強く感じるようになった。

 一人で読んでいるときはこんな読み方では絶対続かないであろう。ストーリー展開の面白さなど味わえない。皆でやるからこそ、こんな読み方ができる。そしてこんな読み方を一度や二度することが絶対に必要だと確信するようになった。こうして英文の構造に強くなったら、いつでも早読みに転向できる。

 以上、体験による読書グループの効用を紹介しました。

4)毎日やる意味:忘れないメリット 2003/09/16 

 語学に限りませんが、何かを身につけるには毎日の練習が必要です。毎日やる意味はいくつもあると思いますが、私は次の二つが大きいと思います。
@大量の知識を記憶するには毎日少しずつやらなければ追いつかない。
A毎日やれば忘れずにすむ。

 @はあまりに当然ですが、Aは案外気づいていないのではないでしょうか。記憶力が悪いとこぼす人はAを実践していないと思います。せっかく憶えても何日か放っておけばほとんど忘れてしまいます。やってみればわかりますが、その日のうち、次の日程度なら相当量憶えていられるものです。

 私は以前、泳げませんでした。40歳のころ、水泳教室で習った家内についてプールに行き初め、自己流で練習を始めました。その後数年間は毎週末通ったものです。さて、自己流でもなんとか泳ぎの真似事が出来るようになったころ、毎回水と格闘しては、帰り間際にちょっと水と仲良くなれた気がして、「この感じだ!」と思ったものでした。でも翌週水に入るとまた格闘の繰り返しです。そしては上がる間際に「あっ、この感じ!」とまた思うのでした。

 ある時、まとまった休日があって、3日ほど毎日通った時のことです。水に入って泳ぎだすと、前日の終わりに「この感じだ!」と思った感覚が鮮明によみがえるではありませんか。そしてその日はそのまま魚になったように気持ち良く泳げました。さらにその翌日、前日より一層水に馴染んだ感じをはじめから味わったのです。この時の3日間がなかったら私は満足に泳げないままだったに違いありません。

 このことから私は「忘れないうちに思い起こす」こと大切だと身をもって知りました。毎日やることの大きな効果を知りました。週末毎の練習ではせっかくつかんだものをそのつど忘れ去っていたのでした。

 語学でも何でもたまの勉強・練習ではさっぱり前に進めないでしょう。毎日やれば、忘れるひまなく、どんどん前進できるはずです。

5)下手な勉強法・・・畳の上で水練 2003/09/19 

 「いつかは英会話をものにしたい」という人は多い。日本国民の大部分がこの病気にかかっているといってもよいかもしれません。この病気の治し方は二つあると思います。

 ひとつは現実を直視して、無駄な夢を捨てることです。一説には、語学のマスターには5000時間を要するそうです。私自身まだまだ途上の身ですが、それがあながち誇張だとは思いません。その国に生まれれば、何の苦労も無く身につける言語ですが、あとから身につけるには途方も無い時間とエネルギーがかかるので、それを別なことに使ったらとても有効です。

 今ひとつの治し方は、ぐずぐずしていないで、がっぷり四つに取り組むことです。
「いつかは英語」病患者の大多数は実際に勉強はしていません。どこで習ったらいいか?どういう勉強法が効率的か?どのくらいで身に付くか?・・・そういった情報の収集には余念がなく、書店に並ぶ無責任なハウツー本をむさぼり読みます。私自身かつてはそうだったのでその心理はよくわかります。しかし明言できることは、そのような情報収集に時間を費やすことはほとんど無駄だったことです。

 私の敬愛する若者、阿部誠君はそういった人たちをして、「畳の上で水練をしていると」と呼びました。つまり水泳を覚えたいといいながら、一向に水に飛び込まず、プールサイドであれこれ理屈をこねているというわけです。英語の達人は数あれど、楽して達人になった人を知りません。皆、凄まじい努力をして身につけています。
ただその「凄まじい努力」を楽しめる人たちだった点がちょっと違うのですが。

 初めから5000時間を覚悟する必要はありません。誰もが通訳になるわけではないのですから。でも「まず行動してみる」という姿勢が大切です。ハウツー本を読むことは勉強とはいえません。だって自転車に乗る練習をするのに本を読む人はいないでしょう。水泳や自転車と語学が一緒かと思うかもしれませんが、習得過程はかなり共通しています。頭脳訓練でもありますが、筋肉訓練・反射神経訓練の部分が大きいからです。「いつかは英語」病の患者の皆さん、今すぐ水に飛び込むことです。
語学において水に飛び込むとはどういうことか?それは次回にでも。

6)「読む」に思う 2003/09/26 

 教室で皆さんと英語の勉強をしていると毎日面白い発見があります。最近一番興味深く思ったのが次のことです。

 テキストの英文を音読してもらいます。次にその大まかな意味を尋ねます。尋ねられると皆さんは意味を取るためもう一度読もうとします。ここが面白いところです。
つまり、初めの音読では読むのが精一杯で意味の理解は二の次というわけです。

 僕も多かれ少なかれ最近までそんなものでした。native講師のものすごく速い音読を聞いていて思ったものです。彼らはきっと目はずーっと先まで進んでいて、意味を捉え、そして十分な余裕で音読しているのだと。

 翻って僕らは意味を読み取るのが遅いため、とりあえず音読だけ先行させる。意味がわからないまま読むものだから文章の抑揚(イントネーション)がおかしくなってしまいます。

 でも"Practice makes perfect"ということわざが示すとおり、練習をすればいずれ必ず速くなります。何百回も読んで、英語の語順や構造を身体に叩き込めばきっと目ははるか先を読んで意味を捉える時が来ます。

 ただし、音読練習で大切なことは必ずnativeのお手本を真似るということ。
自己流の音読は大変な弊害があります。

7)英語には種類が!? 2003/10/10

勉強仲間のSPAMSPAMさんがうまいことを書いています。

「さばきの英語」と「語りの英語」、がそれ

以前から僕も言いたかったことを実に上手に表現してくれました。
 「さばきの英語」というのは、例えば海外旅行先で、買い物をするとか、レストランでとか、ホテルで苦情を言う等々、さまざまな状況を「さばき」、目的を達するための英会話だそうです。一方、「語りの英語」とは簡単に言えば、もっと内容のある会話を指します。起承転結のある内容を時間の流れや原因と結果などを上手に整理して相手に伝える英語と言ってもいいでしょう。

 多くの人が「英会話を習いたい」というとき、前者、さばきの英語を言っていることが多いように思います。「ホテルやレストランでかっこよくさばいてみたい」とか「英語でかっこよく挨拶を交わしたい」とか。でも幸運にも、旅先で出会った人と会話が始まったとしましょう。挨拶の英語は1分で終わるでしょう。その後は、お互いの国の暮らしぶり、今まで行った旅行先のこと、自分の趣味など、「語りの英語」の独壇場です。「べらべらイングリッシュ」で生きのいいフレーズを丸暗記して臨んでもこういう場面ではあまり役に立たないでしょう。

 僕もさまざまな場面での挨拶や日常生活での動作に伴う英語などは長く生活したわけでないので、苦手です。でもそういった「さばきの英語」はそんなに重要ではないのです。ある程度のまとまった情報を相手にわかりやすく伝えたり、自分の考えを表したりできることが大切なのです。そのためには中学校で習う基本的な英語が使いこなせれば十分役に立ちます。

 もうひとつ大事なことは、話すべきことを持っていることです。話すべき情報、話したい情熱がないと英会話だけ上達することはありません。

8)勉強仲間は大切です! 2003/10/13 

 一人っきりでこつこつ勉強している人いませんか?ぜひとも勉強仲間を見つけましょう。仲間がいることの効用は様々あります。

 (1)三日坊主が防げます。一人ではついついくじけてしまいますが、連れがいることでとどまることが可能です。
 (2)競い合いの効果。時にライバル心が強い意欲を喚起してくれます。

 ここまでは良く知られた常識ですが、もう一つ大事な効用があります。

 (3)記憶が促進される。近年解き明かされた記憶のメカニズムによれば、人間が記憶をするには驚きや感動、喜び、悔しさといった感情の助けが大きいそうです。一人で淡々と勉強していても憶えられない理由はそこにあります。憶えたこと、わからないことなどを仲間と語り合うことによって、それらが輝きを増し、一層大きな興味を喚起してくれる結果、円滑に記憶できるものなのです。

 私自身、札幌英会話協会に入会して仲間を得てから、勉強が楽しくなり、意欲が増しました。英会話学校などでもクラスメイトといかに刺激しあうかが大切です。うちの教室ではぜひそんなクラスメイトであってほしいといつもお話しています。


9)体当たりで憶える 2003/10/17 

 外国人のお相撲さんのはしりはハワイから来た高見山だったでしょうか。今はモンゴル勢やハワイ勢、南米やロシア、世界中から来ていますね。

 みんな日本語をまったく母国語のように操っています。一方、バブル景気以来、ビジネスマンや大学教授などでも日本語を巧みに話す欧米人がテレビに映りますが、どうもお相撲さんほど自然な日本語ではないように思います。どことなく英語風な抑揚がいつまでも残ります。

 僕はここにちょっとした鍵があるように思っています。お相撲さんたちは裸一貫、体当たりで、怒鳴られたりこずかれたりしながら全身で言葉を覚えていくのでしょう。たぶん、教科書で習うとか文字を習うというのは後回しでしょう。ビジネスマンなどはインテリですからきっと先生についてテキストで「きちんと」習うものと思います。

 この違いが、力士の自然な日本語と、インテリの英語っぽい抑揚の日本語を分けると思います。お相撲さんは稽古場で耳から聞いた音とその場の状況から意味をつかみ取り、直ちに身体を反応させ、正しければよし、正しくなければ怒鳴られて、すぐ別な行動を試して正しい理解に至る。文字通り、身体で憶えます。これは幼児が言葉を習得するのとほぼ同じです。全身で、行動で、試行錯誤を繰り返して、だんだん言葉のネットワークを頭の中に構築していきます。インテリビジネスマンは日本語習得の過程できっとかなり後まで、英語を媒介させて学習していることと思います。

 さて私たちはどうでしょう。できればお相撲方式でネイティブ英語を話せるようになりたいものですが、どうやら環境が許さないようです。残念ですが、身体中あざだらけになる心配のないインテリ方式で行きましょう。でもやり方次第で、耳を鍛え、口を鍛えて支障のない程度の立派な英語発音の習得は可能です。

10)立体的に憶える 2003/10/28 

大人になってから勉強したり、ものを憶えるのは大変だというのが通り相場です。
でも私は体験上それほど大変と思っていません。

 確かに53歳の今年になって、日常生活の随所で物忘れをし、思い違いをしてはあわてることが多いのですが、こと好きな英語の勉強に関してはまだまだ単語も憶えられ、読む力も聞く力も成長途上であることを感じています。むしろ憶える力が強くなった気さえします。若いときはあれもこれも興味深くて、ひとつことに集中することが出来なかったのが、現在は「これが一番自分に合っている」と達観し、落ち着いて取り組めるのです。

 モノを憶えるとき、脳の中では似たもの同士を結びつけたり、すでに持っているエピソードを連想したりしているそうです。単語を1000語知っている人と5000語知っている人とでは新しい単語に出会ったときに連想する単語の数が違ってきます。「あっ、これはあの単語と似てるな」とか、「あれの派生語だな」、あるいは「似た意味のあの語とどう違うんだろう」と新たな関心に発展したり、蓄積のある人はそうして脳の中のネットワークがますます密になっていきます。何もない人の頭の中では憶えてもさっぱり「ひっかかり」がないのでなかなか憶えられないということになります。

 うちの教室では中心となる教材をしっかりモノにしてもらうことと併せて、テレビやラジオ、通信教育教材など、なんでも貪欲に聴いたり読んだりすることを奨めています※。例えばある教材で新しい単語を憶えたとします。他の教材で再び出会ったその単語は微妙に表情が違います。「同じ単語なのに別な場所で出会うとまたちょっと違うな」と思います。つまり一回や二回の「出会い」ではその単語の一面しかわからず、二度三度と出合っていろいろな使い方、意味の範囲などを知って、初めて立体的に把握することになります。

 立体的に掴んだ単語や表現はもう自分のものです。逆に平面的にしか憶えていないものはすぐに忘れてしまいます。昔、マメ単で丸暗記した猛者も多いと思いますが、あれは典型的な平面ですからすぐ剥がれます。ただ丸暗記をまったく否定するわけではありません。何事も最初は丸暗記なのですから。ABCを憶えるのに理屈は無用です。1+1=2も理屈ではありません。この段階はただやみくもに反復で憶えてしまうより仕方がありません。

 まとめに入ります。年齢を経ても、記憶能力は衰えません。経験が豊富なだけ記憶に必要な連想が豊富ですから。コツは間断なく続けて忘れるヒマを作らないことです。そして出来るだけ早期に一定の高みに達することです。そこからは勉強が楽しく、新しい英語も立体的に見え、バラ色の勉強になります。

 

※「なんでも貪欲に」にはひとつ条件があります。核となる教材をきっちりとやりきることです。でなければただの「どれもみんな半端」に終わってしまいます。

11)テープレコーダーを壊さなくてよい時代 2003/11/7

 テープレコーダーが普及していなかった時代の語学学習者は大変だったことでしょう。
僕が中学生のころの憧れた田崎清忠先生はリンガフォンという有名な語学レコードを擦り切れるほど聴いて真似をするうちに「どっちがレコードかわからない」といわれたほどだそうです。
 それほどではありませんが、僕もたぶん10台以上のテープレコーダーを壊したと思います。聴き取れなくて、ちょっと戻してはまた再生ということを何百回も繰り返すものだから機械もたまったものではありません。余談ですが昔のラジカセの方が耐久力がありました。10年前より、20年前の方が酷使に耐えたものです。テープレコーダーで繰り返し聴くことは面倒でしたが、聞こえない英語を聴き取ろうとするにはそれしか方法がありませんでした。
 後にICリピーターというものが現れ、好きなところでボタンを押すとICメモリーに記憶した4秒あるいは8秒間を何度でも繰り返すという機能がつきました。大枚をはたいて購入しましたが、次を聴くときテープがすでに少し通り過ぎているため、若干巻き戻さなくてはならないというばかばかしい代物でした。そのころには私も聴き取りが改善して、あまり聴き直さなくてもよくなってきていました。

 今は良い時代です。CDやMDがあります。ボタンひとつで直ちに頭出しができます。
MDならば録音した教材を好きな位置で分割したり入れ替えたりできます。本屋さんに並ぶ英会話の本の相当数にCDが付属しています。昔は別売りのカセットテープが大変高価でしたから隔世の感があります。
 聞く・話す・読む・書く、という語学の4つの技能のうち、会話が目的ならば最も優先されるべきは聴くことです。せっかく音声教材が現在このように便利になったのですから、CDが擦り切れるまで、聴き取れるまでとことん聴きましょう。

 便利になればもっと便利が欲しくなります。CDもMDも便利ですが、「ちょっと戻し」がしにくい点が不満です。今聞いているトラックの頭に戻ることは簡単ですが、3秒前、5秒前に戻ることが大変です。「3秒戻る」という専用ボタンを装備してくれたら学習者は大喜びでしょう。以前そういう機能を盛ったアイワ製のウォークマンタイプを宣伝文句に飛びついて買いましたが、操作が面倒で実用には程遠い代物でした。
 
 でもでも、それでも昔よりはずーっと恵まれているんですよ。テレコを壊さなくていいんですから。

12)やさしい英語は出番が多い 2003/11/20

 この項の第3回で紹介した読書グループでは最近新しい本に取りかかりました。春から読んできた本は大変難解で、それを1語もおろそかにせず徹底読み込みをして得たものはメンバー一同に大きな財産となりました。今度の本はいわば児童文学の範疇に入るものですが、「大人が読んでも面白く、考えさせられる内容だ」と多くの人が賞賛するものです。
タイトルは"Holes"。

 さて読み出すと、前の本とは月とすっぽんの違い。読みやすく、面白く、すいすい進むではありませんか。そして、そのやさしい英語のいちいちが、自分が英語を話す際の参考になるのです。「この表現があればあの時もっとうまく言えた」とか、「これは使える、憶えておいて使ってやろう」とか。

 難解な英語は読書力を鍛えるのに有効でした。一方、やさしい英語は会話力を鍛えるということに改めて気づきました。やさしい英語をしっかり身につけることが会話の早道とはよく言われてきましたが、本当にそうです。英字新聞やTIMEなどの雑誌が読めても話せない人がいるとはよく指摘されるところですが、そうこともあるかもしれません。やさしいとは言っても小説を読むためには中学校3年間の力とプラスアルファは必要です。

 中学校の英語は本当に大切です。基本中の基本です。この基本を十分理解しないと何も始まりません。教室を始めてみると「文法ではなくて会話を憶えたい」という希望が多いので驚きます。香取慎吾の「べらべらイングリッシュ」を間違って理解した例です。

13)香取君は悪くありませんが 2003/11/27 

 あの香取慎吾の「べらべらブック」で一通りの会話ができるようになろうとしたら、あの本を何十冊か丸暗記しなくてはならないでしょう。(たしか2巻くらいしか出てませんが)
 あのテレビ番組が若い人たちに「やってみようか」と思わせた功績は大きいと思います。あのような丸暗記が大切なことも賛成です。ゲーム感覚でチャレンジするのも良いことだと思います。ただし何の体系もなく無秩序に暗記するということが大変非効率なのです。

 赤ちゃんが何万時間もかけて全身全霊で言語を獲得していくようなことを大人がやるのは馬鹿げています。150年前のジョン万次郎のように体当たりで臨む必要もありません。効率的に習得できるよう先人が幾多の体系を用意しました。それが文法です。文法の教え方もいろいろありますが、中学校のテキストは最もよくできています。それを避けて馬鹿な丸暗記をしようとしている人たちが哀れです。

 「べらべらブック」に関して言えば、さらに悪いことに、あの本にはCDが付いていないのです。気の毒に読者はカタカナでめちゃくちゃな英語を憶えることになります。
 


14)カタカナで書けない外国語 2003/12/15 

 弟がベトナムへ数日間行ってきました。日本で使わなくなった車椅子を修理して送ると料金が高いので、小旅行を兼ねて手荷物として持っていくというボランティアだそうです。

 ベトナム語についての話がなかなか面白いです。向こうで出合った人の名前を聞くのですが、何度聞いても聴き取って発音することができないかったそうです。「カタカナで書けない」という表現が言い得て妙。そういえば、私も以前JAICAで研修に来ているアフリカの人達と交流したとき、同じような経験をしたのを思い出します。

 さて、英語を学ぶ私たちにもこのことはしっかり認識する必要がありそうです。ベトナム語ならずとも、言語が違えば発音(音韻といいますが)は程度の差はあっても違います。日本語と英語にも大変大きな違いがあります。わかりやすく言うと「カタカナで書けない」という違いです。

 This is a very large rabbit. という文を”ズィス イズ ア ベリー ラージ ラビット”と発音しても英米人には絶対通じませんが、日本人はほとんどそのことがわからないでしょう。「カッコ良くは聞こえないにしても、まさか通じないことはないだろう」程度の認識だと思います。

 明治時代、はじめて聞いた"American"という英語を「メリケン」と聴き取った人は「アメリカン」と聴いたり言ったりする現代人より耳が素直でした。Hepburnという名前の学者をヘボン博士と呼んだ当時の人の方がオードリー・ヘップバーンと呼ぶ現代人よりずーっと素直でした。それでもなお、原音とは大きく違います。

 英語はカタカナでは書けませんし、カタカナ読みで言っても通じません。毎日発音を指導していて気づくのはこの口という発音装置がいかに多様な音を発することができるかということです。口のあけ方、舌の位置、喉の広い狭い等々の組み合わせによって無限の音が出し分けられます。それらの位置が、それぞれの言語のそれぞれの音によって一つひとつ微妙に違うから「カタカナで書けない」のです。 どうせ英語をやるなら、相手に無理なく聴き取ってもらえる発音を最初に憶えたいものですね。
きちんと学べば誰でもちゃんと身につけられます。

 私は主にNHKラジオ講座の歴代の先生によって英語の音の出し方のコツを「日本語で」教えられ、テープレコーダーを何台も壊しながら一生懸命練習して今日に至りました。まだまだですが、きっと多くの英米人には教えられないたくさんのコツを「日本語で」学んだと思います。
現在オーストラリアのケアンズに3週間ほど語学研修に行っているHKさん(68歳)が、「先生に発音の特訓を受けたおかげで、こちらでは"Good"の評価をもらいました」と嬉しいメールをくれました。

15)伝わらない英語−英語に聞こえない英語 2003/12/19

 Toeicで高い得点を取ったり、英検で高い級を持っていても、聞きやすい英語を話す人はあまり多くありません。英語に聞こえない英語を話す人が大変多いのは残念です。「日本語英語で十分だ」とか「日本語なまりの英語に胸を張れ」のようなことをいう人がいるのも残念です。

 英語として聴き取ってもらうには、単語の発音とアクセントが及第であることに加えて、文全体のイントネーション(抑揚)が英語であることが必要です。日本語は抑揚にそれほど重きを置かない言語なので、外国人が変な抑揚で日本語を話しても理解しやすい。しかし英語では抑揚がカギなので、誤った抑揚で話すと相手には英語として聞こえ
ません。

 今から10年余り前、私が40歳の頃、英語の勉強を再スタートさせ、札幌英会話協会に行き始めると、柏尾誉秀先生という凄い人がいて、発音とイントネーションに殊の外厳しい人でした。「君のイントネーションは違うじゃないか!」とどやされてテープを聴くと、たしかにnativeのそれは違っていました。先生はその頃すでに80歳を超えながら、毎日終日テープを聞き復唱されておられました。聴いた抑揚をテキストの英文上に線で記し、それを読むのでした。私も倣って線を記入し、しばらくやってみましたが、すぐに問題を発見しました。

 テキストに線を記入して憶えようとすると目をつむってもその図がまぶたに映り、頭の中で目がテキストをなぞっているのでした。「聴覚と視覚は別物らしい、これをやっていると永遠に英語のイントネーションは身につけられない」と結論した私はひたすら聴いては聴いたとおり復唱する練習をしたものです。家の者たちは呆れていたほどです。それでも大体間違いないイントネーションが身についたなと思えるようになったのは最近のことです。

 脱線ですが、話すための練習は聴覚と一緒にすべきで、視覚に頼ってはだめだということを他の例でも確認しました。ソロバンの高段者は暗算で競いますがその際、いかに早期に頭からソロバンの映像を消し去るかが雌雄を決するそうです。頭にソロバンを置き、無いソロバンを指が弾く・・・それは入門の頃までで、いつまでもそれでは勝てないのだそう。またモールス信号を憶える時、最初に一覧表を見て視覚で憶えたために聴き取りで後々まで苦労したという体験談を札幌英会話協会の佐藤剛さんに聞きました。

 どうせ英語をやるなら通じる英語を憶えたいですね。通じる条件を挙げてみましょう。
(1)しっかり通る声が最低限必要・・・日本人は英語をやる前に腹式呼吸を覚えないと英語になりません。相手にぜんぜん聞こえない声で話して平気な人が多いです。
(2)発音の基本中の基本だけはマスター・・・言いだせばきりがない発音ですが、最低限、子音なら th 、 r 、 l 、f 、 v 、 w など、母音では hat 、 hut 、hot をはっきり聴けて言えること、heart hurt もはっきり聴けて言える程度は必要。 言われるほど難しいものではありません。
(3)イントネーションを身につける・・・これが一番難しい。たくさん聴いて、理解して、さんざん復唱してみる。これだというルールは思いつかない。身体で憶えるしかありません。強いていえば映画やドラマの印象的な英語を耳に残すことなどでしょうか。

 英語が話せるようになるまでの道のりには山ほど話す練習が必要です。心に浮かんだものをとっさに英語で口から発するという反射を作るには練習量です。それには会話の相手が必要で、なかなか独りではできません。といっても相手が英米人や先生である必要はありません。勉強仲間で十分なわけです。仲間同士でやればお金はかかりません。ただし、その時、最低限英語に聞こえるよう、声量・発音・イントネーションができていなければ相手に嫌われます。いずれにしても英語に聞こえない英語を知らずに話している人は周りに負担をかけている事に気がつく必要があります。

 でも一番の責任はPhonicsのような良い教授法があるのに発音教育をしようとしない学校教育と、発音を野放しにしているあまたの英会話スクールにありますが。
 

16)なぜ憶えられないか‐使わないから‐InputとOutputの両方が大事2004/03/29

 多くの人が「いくら勉強しても英語が憶えられない」と嘆きます。僕も以前同じ悩みを持ちました。今もその問題は解決したわけではありませんが、理由がわかっているので悩みはしません。
憶えられない理由は簡単です。使わないからです。

 人間の大脳は「使わないもの(=必要のないもの)は憶えない」という基本ルールに忠実に従っています。「いくら勉強しても英語が憶えられない」人たちはおそらく一人の例外もなく、英語を使っていないでしょう。「勉強の対象」としか位置づけていません。この世に勉強の好きな人はいません。「勉強しなくては」と真面目に思えば思うほど、脳は憶えることを拒否します。
 私はこれを「Input(入力)一本やりの学習」と考えます。

 Output(出力)も大事なのです。つまり英語を使うことです。理想は仕事や生活に英語を使うことですが、そんなことができる人は稀ですから次善の策は話す機会を「人工的に作る」ことです。会話サークルは丁度これです。コツは「英語のみで」とルールを厳格に課すことでしょう。そういう場で思ったことが言えないもどかしさ、悔しさを味わって勉強するとあら不思議、「これをあの時に言えば良かったんだ」「今度はこれを使おう」という具合に脳がむさぼるように新たな知識を求めます。
「必要は発明の母」といいいますが、「必要は語学の母」でもあります。必要感を感じさせないままの勉強は非効率この上ありません。

 話はそれますが、現代人は呼吸が下手で、深呼吸ができないといわれます。浅い呼吸ばかりしているので不健康なのだと。その主な原因は吐くことができないことだそうです。肺の中の空気をすべて吐き出すとあとはひとりでに新鮮な空気が肺の隅々まで行き渡ります。InputしたければまずOutputをしてみると、あとは無理なく入ってくる。こじつけのようですが学習も呼吸と同じです。

 閑話休題、大手英会話スクールでは外国人教師を置いて、上記のような会話練習をふんだんに体験させる場を提供しています。それはそれでけっこうなことですが、お金ばかりかかり、逆にOutputばかりでInputがおろそかなので実りがありません。場馴れはしますが、「言えなかった」「わからなかった」ことに慣れっこになってしまう傾向があります。私などには大手校は「生徒がいつまでも初級に留まっている方が商売上好都合」と考えているのではないかと思うくらいおざなりに見えます。

 真面目にこつこつと勉強することと、その結果を実践してみること、つまり私の言葉でInputとOutputの両面を織り込むことが健康的かつ最も効率の良い勉強といえます。

17)英会話スクールの倒産  2004/04/08 

 ひどい話ですね。「ただで英語学べます」の甘言で大勢の人から数十万円を前払いさせ、突然雲隠れとは。札幌市中央区「トレンディハウス」の事件です。計画的だったのかもしれません。

 でも、かりに倒産しないで、営業を続けていたとしても、同じくらい罪深かったかもしれないと私は思います。なぜか…生まれながらに英語を話すという理由だけで英米(豪その他)人を雇って配置し、宣伝して生徒を集め、会話を練習させるだけのビジネスだからです。教える力、指導する力があったと思えないからです。

 私自身、勤め人のころ、市内の某スクールに数十万円払い込んで1年半ほど練習をしました。「高い」とは思いましたが、私は元を取ったと思います。私は主にラジオ講座で長年独習したものの、会話の機会だけは絶対的に不足し、他に練習の方法がなかったからです。
 私のように会話練習の機会だと割り切って通うなら「駅前留学」も「お茶の間留学」もよいでしょう。「勉強は自分でする」というならば。でも「たくさん通えば必ずぺらぺらになります」のような甘言に乗せられ、ただ通う人は「何年たってもそのまま」です。実際そういう人がたくさんいました。

 「すべての外国人講師が」とはいえませんが、彼らはめったに間違った英語を直しません。間違った発音を直しません。生まれながらにしゃべっているだけの英語ですから、鋭い質問に納得いく説明をできる講師はまれです。きっと私たちだって、日本語を教えるならば、そもそもきちんとした日本語が話せて、その上相当勉強もして務めなければならないでしょう。誰でもOKという訳にはいきません。ところが英語スクールの現状は「誰でもいい」に近いものです。

 以上の理由から、倒産せずやっていたって同じくらい罪深いと言ったのです。中級程度になって「ほぼどんなことも英語で言える」けど即座にはいかないのでnativeとの会話練習機会が不可欠、という人のみがそういうスクールを役立てることができます。でもそういう人の絶対数はかなり少ないように思います。

 英語を身につけたいと思う人の大多数が中級以下の段階でしょう。そのころは勉強のしかたがなかなかわからないものです。私自身もそうでした。そのためたくさんの回り道をしました。その段階の人に必要なのは、勉強のしかたを相談できる人、やればやるほど出てくる疑問をその都度氷解してくれる人です。私はそんな役に立ちたいと思っています。

19)オーバーラッピングの効用 2004/04/22

 当教室ではオーバーラッピングを強く薦めています。つまり、モデルの音読に合わせて一緒に読むことです。これをやると素晴らしい効果が現れます。ざっと考えても次のような効果が考えられます。
(1)聴く力が増す…ただ聴くより自分も読むので、いきおい真剣に聴かざるを得ません。
(2)発音が矯正される…モデルと自分の発音のギャップがこれでもかと意識させられる。
(3)英語の骨格が身につく…一緒に読むことで、間のとり方、意味の単位が自然と身につく。
(4)イントネーションが身につく…英語独特のイントネーション(抑揚)はこの方法でのみ身につきます。
(5)最短時間で最大効果…耳と口をフル稼働する・・・ということは当然頭も能力全開です。さらには心肺機能も全開。声も大きく出さなければついていけないからです。5分10分で他の1時間分の学習効果があります。「勉強していると眠くなって困る」という悩みをよく聞きますが、睡魔の出てくるスキマなどありません。5分間やったらフラフラになるでしょう。
 
 ただし、。「オーバーラップを試みたが、とてもついてけなかった」という声も聞きました。その場合はこうしましょう。
(1)まず、発音をきっちり習い、矯正してもらう。舌の使い方、口のあけ方などは優秀な日本人講師の方がわかりやすいです。
(2)はじめはゆっくりの音声教材から始める。
(3)追いつかない箇所はそこだけ集中的に口の運びを何回も練習する。

 いずれにしても自己流でやるより、コーチについてやった方が安全で且つ速く効果が上がるでしょう。これを卒業するとその先にはテキストを見ず、耳だけで復唱する方法、シャドウィングがあります。

20)こんな人たちがウチ(の教室)に来ています 2004/04/27

縁があって、札幌市白石区の小さな教室へ通ってくださる人の中にはこんな人たちがいます。
某ナンバーワン大手スクールに週に何回も通って鍛えてきた「I」さん。そちらも継続しながらウチにも通っています。練習の甲斐あってずいぶんお話できる方ですが、ご本人曰く、「文法を教えてもらえない」「発音も特別に何回も習ったけどお金のムダだった」「間違いをあまり直してくれない」のだそうです。他にもnative(英米人)講師に4年も習って「あのお金と時間は何だったんだろう」とこぼす人・・・そういう人が何人も来ます。

 これまでも繰り返し書きましたが、nativeの講師は上手く生かせなければ、大変無駄の多いものになりかねません。中学校1・2年生程度の基本も不十分な人がnative講師に質問しても、なかなか質問がわかってもらえないでしょう。彼らは概して熱心ですから「聞きたいことはたぶんこれかな」と想像して、見当違いの説明を一生懸命延々としてくれます。これは時間とお金のムダです。

 想像ですが、native講師は多くの場合「生徒の意欲を挫かないよう、間違っても、発音が変でもできるだけ直すな」と雇用主から言われているのだと思います。あるいはnative講師が直そうと思っても英語がよく理解できない人に英語で納得いく説明するのは大変困難です。

 多くの人が中学校・高校で英語嫌いになったといいます。その理由は、面倒な文法をただ憶えさせられ、いちいち間違いを指摘され、減点され、恥をかかされ、叱られて・・・という体験のようです。

 今、街でにぎわう英会話スクールはその対極にあるようです。エンターテイナーのようなnative講師が楽しませ、文法など憶える必要一切なし、間違ったって気にしないこと、発音も気にしないで、ただ何回も通って練習さえ重ねればそのうちに・・・と。

 文法偏重の減点主義も良くありませんでしたが、楽しいばかりの当世風英会話スクールも学校犠牲者の幻想につけこんだ商法だと思います。早々に見切りをつける人もいる一方で、「まだ期間が足りないのだ」「自分の力が不足なのだ」とずるずる大変なお金を注ぎ込む人もいると聞きます。

21)語学の学習本に2種類あり! 2004/05/06 

 この仕事をするようになって以前にも増して書店で参考書をあさるようになりました。以前の興味は自分の能力が向上することでしたが、現在は教室の受講生さんたちにいかに楽しく、能率よく、学習効果を上げてもらえるか、そればかりを考えているので、ヒントを捜して今日も良書ハントに出かけます。

 店頭には相変わらず、毎月のように数多くの新刊が並びます。そして相変わらず、「英語は勉強するな」式の威勢のいいタイトルが踊ります。最近面白い発見をしました。「あまたある、語学本は二つのグループに分かれる」という発見です。

 ひとつ目のグループは、英語という難攻不落の怪物を読者にいかに能率よく習得してもらおうかと、知恵を絞って体系化した労作。多くは英語の基本全般を「網羅的・系統的」に扱います。今ひとつのグループは、興味深い断片的知識を、つれづれなるままに、つまみ食いして終わってしまうものです。

 前者グループの著者に共通するのは、読者に英語のすべてを身につけてもらおうと心を砕いていることで、総じて読者に対する責任感と良心にあふれています。翻って後者グループの著者に共通するのは、永年の構想などは無く、思いつきで、読者に対する責任などは念頭にないことです。

 前者を網羅型学習書、後者をつまみ食い型読み物と呼ぶのが妥当でしょうか。
後者のような本を100冊読んだって、英語は向上しません。

 このことは英会話スクールにも言えるなと今思いました。生徒の実力向上に責任感を持って一生懸命努力する少数派と、「当方はやることはやりました、あと身につけるかどうかはあなた次第」といった態度の大多数のところ。

22)古くて新しい勉強法・・・暗唱 2004/05/17

 当教室では実は暗唱を奨励しています。テキストのストーリーをCDのモデル音声と一緒に音読練習を繰り返し、しまいに見なくても一緒に言えるようになり・・・結果として暗唱できてしまう。これを利用しています。

 実は私自身の経験上、いろいろやってみたけれど、教材のストーリー英語を全部暗唱してしまうのが一番効果のある勉強だと結論したからです。暗唱といっても長い英文をすべてそらんじる必要はありません。日本語訳をたよりに停滞しないで言えれば十分です。

 暗唱を試みる段階で理解の不確かなところが次々露呈します。あやふやなままでは憶えられないので、いきおい完全に理解するようになります。逆に言えば、理解できたかどうかを手っ取り早くチェックするには暗唱してみれば簡単です。

 熱心な受講生さんたちも初めのうちは音を上げます。が、暗記に要する時間は劇的に少なくなります。初めは2・3日もかかっていたものが、わずか数分程度を何回か重ねるとすっかり憶えられるようになります。

 暗唱ができたらもうそこは「完全に理解できた」と考えて、次に進むようにします。そうでないと、判ったかどうか確信が持てずにいつまでももやもやしたまま次に進めないからです。暗唱がどんどん早くなっていくにつれ受講生さんたちは自信の表情になり、若返ってさえ見えます。

 しかし、大事なことは最初に発音の基礎指導をしっかりと受けることです。誤った発音のままの音読・オーバーラッピング・シャドーイングは大変な損失につながります。

 
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